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◆『伊能忠敬と間宮林蔵の業績』中島武久 ブイツーソリューション/星雲社 2022年
最近欲しい本をチェックしていた時に目に入った本。伊能・間宮関係で新しく発行された本だったので、どのような感じなのか試しに購入してみたものです。研究本というよりはこれらの人物に感銘を受けて執筆したプレゼン本といったところでしょうか。文だけの構成には珍しく横書きのレイアウトです。
間宮の項に関しては、参考書籍が吉村昭の小説>>22になっているので、そちらを読了しているなら特に真新しい情報はありません。というか、著者なりに編成はされてはいるものの若干言い回しを変えている程度のほぼ引用なので、著作権的にどうなのか謎…ちょうど樺太探検の部分をチョイスしているのは、著者が戦前のお生まれだからというのもあるのでしょうか(私も樺太探検の部分は好きですが)。
伊能の項には興味深いものもあって、佐原時代の旗本津田氏との関係や、永沢家との駆け引きなど、面白く読ませてもらいました。ただ私が関係書籍をそれほど読んでいない故なのだろうと思うので、やはり以前に出版された伊能関係の名著に当たるべきかなと。そういうきっかけをくれる種の本かもしれません。
これは、著者というより出版社や発行元への苦言なのですが、誤字が異様に多いのはさすがに辟易しました…1〜2ヵ所程度ならあるあるですが、読み進める度にそこで引っ掛かり、雰囲気も壊してしまっているように感じます。同一人名が次では違う字で表記揺れしていたり、図合船を合図船と誤記(最後までずっとこの表記だった)していたりで、もしや自分が知らないだけでそういう呼びもあるのかと調べ直したりと、余計な作業で読むのを中断させられるのはちょっと…(年末年始に頭抱えながら読んでいた>>21のはこれです)校正、されてます??
同人誌ならともかく、仮にも出版社で発行・販売しているならちゃんと校正入れてほしい。
(出版社名で調べてみると、なんとなく察しな感じではありましたが…本を出版したいという人が相当数いるのはわかるけど、出すからにはちゃんと整えてやってよ)
昨今の商業出版事情も垣間見えてしまって、微妙な気持ちになっています。
#伊能忠敬 #間宮林蔵
最近欲しい本をチェックしていた時に目に入った本。伊能・間宮関係で新しく発行された本だったので、どのような感じなのか試しに購入してみたものです。研究本というよりはこれらの人物に感銘を受けて執筆したプレゼン本といったところでしょうか。文だけの構成には珍しく横書きのレイアウトです。
間宮の項に関しては、参考書籍が吉村昭の小説>>22になっているので、そちらを読了しているなら特に真新しい情報はありません。というか、著者なりに編成はされてはいるものの若干言い回しを変えている程度のほぼ引用なので、著作権的にどうなのか謎…ちょうど樺太探検の部分をチョイスしているのは、著者が戦前のお生まれだからというのもあるのでしょうか(私も樺太探検の部分は好きですが)。
伊能の項には興味深いものもあって、佐原時代の旗本津田氏との関係や、永沢家との駆け引きなど、面白く読ませてもらいました。ただ私が関係書籍をそれほど読んでいない故なのだろうと思うので、やはり以前に出版された伊能関係の名著に当たるべきかなと。そういうきっかけをくれる種の本かもしれません。
これは、著者というより出版社や発行元への苦言なのですが、誤字が異様に多いのはさすがに辟易しました…1〜2ヵ所程度ならあるあるですが、読み進める度にそこで引っ掛かり、雰囲気も壊してしまっているように感じます。同一人名が次では違う字で表記揺れしていたり、図合船を合図船と誤記(最後までずっとこの表記だった)していたりで、もしや自分が知らないだけでそういう呼びもあるのかと調べ直したりと、余計な作業で読むのを中断させられるのはちょっと…(年末年始に頭抱えながら読んでいた>>21のはこれです)校正、されてます??
同人誌ならともかく、仮にも出版社で発行・販売しているならちゃんと校正入れてほしい。
(出版社名で調べてみると、なんとなく察しな感じではありましたが…本を出版したいという人が相当数いるのはわかるけど、出すからにはちゃんと整えてやってよ)
昨今の商業出版事情も垣間見えてしまって、微妙な気持ちになっています。
#伊能忠敬 #間宮林蔵
◆日本史リブレット人057『伊能忠敬』星埜由尚 山川出版社 2010年
伊能忠敬についての本、有名すぎる人物のせいか未だに何を読むべきかがわかっていません。
童門冬二の本や、大谷亮吉、保柳睦美ほか各先生方の研究本もあるのは知っているのですが。
ネット上に伊能研究会のサイトもあり、会報誌などの内容も公開されているため、最新の情報が掴めるのでそちらにガッツリとお世話になりっぱなしで来てしまった感があり、なんだか申し訳なさもあったりします(非会員です…)。
著者は伊能研究会に携わっている方なので、信用出来る良い本だと思います。
手始めに知りたいというならば、個人的にも日本史リブレットシリーズはとても重宝しています。
文章の中に出てくる人物や事象の解説が上部にあり、わかりやすいです。
不明点にぶつかった時に、研究会のサイトと共に折に触れて参考書的に引かせてもらっている本です。
余談ですがそういえば、小説『四千万歩の男』も読みたいと思いつつもすっかり購入を忘れていた…
伊能忠敬に関しては、史実に基づいた学習(研究)本が読みたかったので、所詮フィクションだろうからと、後回しにしていたので。
しばらく積読になるだろうけど、そろそろ購入しておこうかな…
#伊能忠敬
伊能忠敬についての本、有名すぎる人物のせいか未だに何を読むべきかがわかっていません。
童門冬二の本や、大谷亮吉、保柳睦美ほか各先生方の研究本もあるのは知っているのですが。
ネット上に伊能研究会のサイトもあり、会報誌などの内容も公開されているため、最新の情報が掴めるのでそちらにガッツリとお世話になりっぱなしで来てしまった感があり、なんだか申し訳なさもあったりします(非会員です…)。
著者は伊能研究会に携わっている方なので、信用出来る良い本だと思います。
手始めに知りたいというならば、個人的にも日本史リブレットシリーズはとても重宝しています。
文章の中に出てくる人物や事象の解説が上部にあり、わかりやすいです。
不明点にぶつかった時に、研究会のサイトと共に折に触れて参考書的に引かせてもらっている本です。
余談ですがそういえば、小説『四千万歩の男』も読みたいと思いつつもすっかり購入を忘れていた…
伊能忠敬に関しては、史実に基づいた学習(研究)本が読みたかったので、所詮フィクションだろうからと、後回しにしていたので。
しばらく積読になるだろうけど、そろそろ購入しておこうかな…
#伊能忠敬
そろそろ、このカテゴリを始動させるべきかなと。関連本のレビュー的なものをいつかやりたいと思ってました。
小説などの創作作品から研究本まで、ぼちぼち上げていきます。
◆新装版『間宮林蔵』吉村昭 講談社 2011年(原版は1987年発行)
やはり最初に挙げるのはこちらでしょうか。小説ですが、資料に忠実に基づいた作品です。
2015年に初読し、これで江戸期の蝦夷地探検家に興味を持ち始めたのでした。
お前の歴史創作と北方探検家って何なのよ?と聞かれたら、とりあえずこれを読め!と叩きつけるでしょう。私自身がここから始まっていますので。
分かち合えたら僕と握手!合わなければごきげんよう!(やけっぱち)
予てから北海道の歴史に関心はあったため、その流れで『熊嵐』『赤い人』などいくつか読んでおり、吉村作品にハマりつつあったので他にも読みたくて『高熱隧道』(これは北海道の話ではないが)を書店で探したものの見当たらず、代わりに目に飛び込んできたのがこれでした。間宮って海峡の?樺太探険だっけ?時代はいつ(明治あたりだと思ってた)?なんなら間宮海峡の位置もよくわからない(宗谷海峡の別名だと思ってた)というくらい、それまでは本当に無知だった自分がもはや懐かしい…というか恥ずかしい(笑笑)
戦前の教育では偉人のカテゴリーに入っていたようですが、自分の年代ではすでに学校では習っていなかったので(教育方針や地域性もあるのかもしれない)、仕方ないといえば仕方ない。北海道とは関係ないかもしれないけど、お勉強として読んでおこうくらいの気持ちで手に取ったものです。
それが、予想に反して、とても面白かった。探検(冒険)モノだからというのもあるけれど、ロシアとの緊張、異民族の生活、世界情勢等、当時の時代背景からがっつりと、本当に勉強になった。人物の一代記なのである程度順を追っていてわかりやすく、この作家特有の淡々とした筆致が逆に場面や心情の人間臭い生々しさを描き出していて、思わず物語に没入してしまいました。巻頭に間宮の樺太図の写しがあるので、これを見ながら読み進めると距離感や位置がわかって良いです。北海道各地にも植林や測量などで関わっているためガッツリ縁はあります。
もちろん、樺太や北方領土の歴史はこれ以前にも以後にもあり、関わった人物もまだまだ多くいるので間宮の活躍がすべてではありません。
それにしても、間宮本人のアクの強さよ…!文化露寇のフヴォストフ事件に巻き込まれるところから物語が始まるのですが、周りが撤退を決める中、自分は交戦を主張したという証文を書けと上司に迫ったり(それ、あの時代でありなの!?)、樺太探検で同行した松田伝十郎に、もう一度海峡の見える場所まで連れて行けとせがんだり、ゴローニンとバチバチやり合ったり…上司や外国人にも堂々と立ち向かう姿は印象的(史実です)。ただそれらの言動も心情的には理解できるので、作家の表現の巧みさもあるのかもしれない。
ここでは全体的に間宮は人間臭くも真面目なキャラとして描かれているので、感情移入しやすくハマる要素はあるのだろう。
伊能忠敬とは師弟関係だったというのもこれで知って、すごく意外…!と驚いたり。
奉行所からの処分を待つ心情や、異民族からの襲撃、探検中の凍傷や野に分け入る描写は、もうそれだけでこちらも胃が痛むほど。特に野に入る場面の表現、「糠蚊の群れに包まれる」は、『赤い人』でも同じような表現があったと記憶しているけれど、これは実際にそういう経験をしなければ書けない表現なので、信用に値します。そう、ヤブ蚊には、襲われるのではなく、包まれるのです…(経験あり)
協力を仰ぎ(報酬は一応あっただろうが)、同行したアイヌの人々の労苦、異域の生活や風俗、交易の生き生き(殺伐と?)した姿も一読に値します。
シーボルトとは面識がなかった前提で書かれていますが、後の研究では会っていたことが判明しているため、このあたりはあくまで創作として見る必要はあるでしょう。
白状すれば、自分も、読み始めた時は幕府の役職(時代劇なども詳しくないので聞き慣れなかった)や時代背景などの理解が難しく、10ページくらい読んで1ヶ月程放置していたのですが(汗)、気を取り直して続きを読み出すと、樺太行きあたりから俄然面白くなってスラスラ読み進め、後半は暗雲が立ち込める展開に切なくなりつつも一気に読了しました。気がついたら相当この間宮に入れ込んでいて、しばらくは関連の本や情報を漁りまくっていたりと、まあハマりました。あれから10年経つんですね…
もうこれってドラクエでは?江戸後期ロールプレイングの世界を堪能出来る1冊です(多分)。
#間宮林蔵
小説などの創作作品から研究本まで、ぼちぼち上げていきます。
◆新装版『間宮林蔵』吉村昭 講談社 2011年(原版は1987年発行)
やはり最初に挙げるのはこちらでしょうか。小説ですが、資料に忠実に基づいた作品です。
2015年に初読し、これで江戸期の蝦夷地探検家に興味を持ち始めたのでした。
お前の歴史創作と北方探検家って何なのよ?と聞かれたら、とりあえずこれを読め!と叩きつけるでしょう。私自身がここから始まっていますので。
分かち合えたら僕と握手!合わなければごきげんよう!(やけっぱち)
予てから北海道の歴史に関心はあったため、その流れで『熊嵐』『赤い人』などいくつか読んでおり、吉村作品にハマりつつあったので他にも読みたくて『高熱隧道』(これは北海道の話ではないが)を書店で探したものの見当たらず、代わりに目に飛び込んできたのがこれでした。間宮って海峡の?樺太探険だっけ?時代はいつ(明治あたりだと思ってた)?なんなら間宮海峡の位置もよくわからない(宗谷海峡の別名だと思ってた)というくらい、それまでは本当に無知だった自分がもはや懐かしい…というか恥ずかしい(笑笑)
戦前の教育では偉人のカテゴリーに入っていたようですが、自分の年代ではすでに学校では習っていなかったので(教育方針や地域性もあるのかもしれない)、仕方ないといえば仕方ない。北海道とは関係ないかもしれないけど、お勉強として読んでおこうくらいの気持ちで手に取ったものです。
それが、予想に反して、とても面白かった。探検(冒険)モノだからというのもあるけれど、ロシアとの緊張、異民族の生活、世界情勢等、当時の時代背景からがっつりと、本当に勉強になった。人物の一代記なのである程度順を追っていてわかりやすく、この作家特有の淡々とした筆致が逆に場面や心情の人間臭い生々しさを描き出していて、思わず物語に没入してしまいました。巻頭に間宮の樺太図の写しがあるので、これを見ながら読み進めると距離感や位置がわかって良いです。北海道各地にも植林や測量などで関わっているためガッツリ縁はあります。
もちろん、樺太や北方領土の歴史はこれ以前にも以後にもあり、関わった人物もまだまだ多くいるので間宮の活躍がすべてではありません。
それにしても、間宮本人のアクの強さよ…!文化露寇のフヴォストフ事件に巻き込まれるところから物語が始まるのですが、周りが撤退を決める中、自分は交戦を主張したという証文を書けと上司に迫ったり(それ、あの時代でありなの!?)、樺太探検で同行した松田伝十郎に、もう一度海峡の見える場所まで連れて行けとせがんだり、ゴローニンとバチバチやり合ったり…上司や外国人にも堂々と立ち向かう姿は印象的(史実です)。ただそれらの言動も心情的には理解できるので、作家の表現の巧みさもあるのかもしれない。
ここでは全体的に間宮は人間臭くも真面目なキャラとして描かれているので、感情移入しやすくハマる要素はあるのだろう。
伊能忠敬とは師弟関係だったというのもこれで知って、すごく意外…!と驚いたり。
奉行所からの処分を待つ心情や、異民族からの襲撃、探検中の凍傷や野に分け入る描写は、もうそれだけでこちらも胃が痛むほど。特に野に入る場面の表現、「糠蚊の群れに包まれる」は、『赤い人』でも同じような表現があったと記憶しているけれど、これは実際にそういう経験をしなければ書けない表現なので、信用に値します。そう、ヤブ蚊には、襲われるのではなく、包まれるのです…(経験あり)
協力を仰ぎ(報酬は一応あっただろうが)、同行したアイヌの人々の労苦、異域の生活や風俗、交易の生き生き(殺伐と?)した姿も一読に値します。
シーボルトとは面識がなかった前提で書かれていますが、後の研究では会っていたことが判明しているため、このあたりはあくまで創作として見る必要はあるでしょう。
白状すれば、自分も、読み始めた時は幕府の役職(時代劇なども詳しくないので聞き慣れなかった)や時代背景などの理解が難しく、10ページくらい読んで1ヶ月程放置していたのですが(汗)、気を取り直して続きを読み出すと、樺太行きあたりから俄然面白くなってスラスラ読み進め、後半は暗雲が立ち込める展開に切なくなりつつも一気に読了しました。気がついたら相当この間宮に入れ込んでいて、しばらくは関連の本や情報を漁りまくっていたりと、まあハマりました。あれから10年経つんですね…
もうこれってドラクエでは?江戸後期ロールプレイングの世界を堪能出来る1冊です(多分)。
#間宮林蔵
人物にスポットを当てて知りたい場合はやはり人物叢書シリーズが良いのでしょうね。
徳内さん関連を復習して再読したので、上げておきます。
初読からは大分経つのですが、吉村昭の『間宮林蔵』>>22では、気難しい大先輩のように書かれていたものの、かなりの北方のエキスパートでもあったということなら是非知っておきたい人物だと思い、こちらを手に取りました。同時期に読んでいたみなもと太郎『風雲児たち』でも最上徳内がクローズアップされており業績は大まかに把握していたこともあって、本書も研究書でも結構面白くて一気に読了した記憶があります。
先日年表を作りながら再読したのですが、著者の熱意が感じられる筆致で、研究書としては血が通っておりまた興味深く読みました。著者は徳内さんの妻おふでさん側の島谷家の縁者の方らしく(そもそも徳内とおふではそれぞれ祖父・曽祖父が兄弟という親戚関係)、それ故の敬愛の念も感じられます。
本文内容の徳内の業績については、このブログでも度々記したので割愛します。
一つこれはえぐいなと思ったのが、遠山景晋に付いて蝦夷地巡見した際に江差の神社に松前章広が奉納した「降福孔夷」の額を「降福紅夷」と読み(くずし字だったためそうとも読めた)、松前藩がロシア側に傾いていると解釈して問題視した件は思わず「国家安康かよ!」と叫びたくなりました(笑)。遠山は、それは詩経の一句だからこじつけは良くないと諌めたものの、結果俎上に上がってこれが松前上地(蝦夷地全域の幕府直轄)の決め手になったというのは、中々の策士振りだなあと。
松前藩のアイヌに対する差配や対露警備もろくになってなかったため、常に上地の機会を幕府側に窺われていたということなのでしょうが。ここに清い人情家というばかりではない徳内の姿が垣間見られてそこも興味深くもあります。それならシーボルトに地図を渡した件も本心はわからないわけで…
この精力的な行動を見ていると、本当は樺太の北部にも行きたかったんだろうな、なんなら島か半島かも自分が見極めたかったんだろうなと思ったりします。間宮などの若手にちょっと嫉妬する黒徳内さんもいたのかもとか。それはそれでなんだか人間臭くていいな。
#最上徳内