トップ画像
TOP > Photo

江戸期の北方探検家で歴史創作。絵・漫画・設定・調べ物などゆるゆるっとな。


タグ「近藤重蔵」を含む投稿2件]

◆『北冥の白虹(オーロラ)』 乾浩 新人物往来社 2003年

最上徳内の全生涯について描かれた小説です。とはいえ、やはり業績が豊富なので、晩年のシーボルトとの交流などは大まかに駆け足になってしまっていますが、9度の蝦夷地渡海をメインに、資料に基づいてみっちり描かれています。蝦夷地探査に関わった人物はこの時代にも沢山いて、まあ山のように役職や人名が出てきます。ある程度、ロシアの南下政策や寛政蝦夷蜂起(クナシリ・メナシの戦い)などの予備知識を入れておかないと、スムーズに読み進めることは難しいかもしれませんが、巻末に参考資料一覧があり、淡々とした史実の記録の中にも冒険譚的に人物を活写しようという意欲が感じられる作品になっています。

とても唸らされたのは、近藤重蔵に対する心情なのですが、役目に燃えるあまり脱落した部下を置いてさっさと先へ進んでしまう近藤はその傲慢さもあって周りからの評判が良くなかったものの、徳内にはそのような悪口を叩く部下たちの意識が低く見え、むしろ自分が近藤を支えなければとの意欲に燃えたというのがかなり印象的でした。松前藩の圧政に虐げられるアイヌたちには情を寄せる徳内でも、武士の身分に甘んじながら、理不尽とはいえ上役に不平不満を垂れる部下たちの姿は見苦しいものだったというのになるほどなと思ったら、その後の探索では自分の上役になる松平忠明とやりあったりと、おやおや?となる場面もあるのですが、一貫しているのは、アイヌに対する上役の対応の良し悪しの部分なのかなと。近藤は「大日本恵登呂府」の標柱に、和人のみならずアイヌ従者の名(和名に改名されてはいたが)も書き入れ、自分に付いてきた者は区別なく証人として取り上げたというのは近藤の業績の中でも有名な話です(もっとも、当初はアイヌ従者の間でも強引な近藤に不満を持っており、そこを徳内が近藤を取りなしつつ隊の調和を図っていたといわれている)。

ちなみに近藤に置いていかれた部下の一人が村上島之允なのですが、徳内の村上に対する同情の念もなるほどな、と思いました。絶対村上は近藤のことが嫌いだろうと思っている自分の次元が低く恥ずかしいです…(苦笑)考え改めるべきか

作者の近藤に対する思い入れが強いのか、好意的に書かれているのが興味深いのですが、同じ作者の小説で近藤を主人公にしたものがあり、以前読んで面白かったのでいずれ再読して紹介しようと思います。

北辺の択捉島やウルップ島の自然の豊かさに一個人として感激しつつも、ロシアや諸外国の手が伸びる前にいち早く開発するべきという役人としての使命感の狭間で懊悩する様子も度々描かれ、そうだよそういうことなんだよなと。資源開発と自然保護は相性がとことん悪い。
国か、人々の生活か、環境か…イジュヨとのエピソードにしろ、世の中の様々な課題が包括されている作品にも感じられました。

#最上徳内 #近藤重蔵  

関連本

20240930024346-admin.jpg
202409300243461-admin.jpg
そろそろこれを上げておこうかと。以前Twitterやっていた時に上げたもの。最近はMastodonとかでも上げたかな。
描いてて大変だったけど楽しかったキャラ設定。あくまでも人物を借りた個人の創作ということで。

全身描いたのはそれぞれの身長差を確認したかったというのもあるけど、身長についての記録や言い伝え(と推測)があるのはまみりんとイノー先生とコンドウ、そしてたけちゃんだけだと思う。あとはあくまでイメージです。
とくないさんは小柄な感じがする。コンドウは六尺(一尺は約30cm)あったという記録があるのででかいね! 当時だと尚更大男。うん、そんな感じはする。

個人的に一番勝手にウケてるのは、シマ先生とコンドウの関係性かな。シマ先生がコンドウに付いて択捉島へ渡ろうとした時、体調を崩して寝込んだシマ先生をコンドウがおちょくってさっさと置いて行ってしまったということがあって、これは多分シマ先生はコンドウのことが苦手でしょって思った。そんな傲慢なコンドウをとくないさんが嗜める、までがワンセット。
ちなみにまみりんより少し前の年代の話。まみりんのマントみたいなのは郷里に残された(つくばみらいの記念館に展示されている)蝦夷毛布をモデルにしているよ! 樺太探検の時ではなく、蝦夷の測量時に使っていたものらしいけど。

それぞれのキャラをクローズアップしてビジュアル絵としても小話としても描きたいわね…

#間宮林蔵 #伊能忠敬 #松浦武四郎 #村上貞助 #近藤重蔵 #村上島之允 #最上徳内 #今井八九郎 #松田伝十郎

イラスト